2013年05月01日

昭和の生活(81) 何が本当に便利か <各界の10家族に聞くD 三船久蔵氏宅/柔道十段> (昭和30年)

家庭用電気器具のうち、八点(トースター、ミキサー・扇風機・ぜんたく機・ストーブ、冷蔵庫、掃除機、テレビ)について、各界の名士の家庭について、その有無、使ってみての感想などを聞いてみよう。

---------------------------------------------------------------------------

【三船久蔵 明治16年(1883)−昭和40年(1965)】
 掃除機と、テレビはない。ミキサー(東芝)は、毎日使っているが、水を入れるため、味がうすくなるのが欠点。よく水を入れるのを忘れて、モーターを切らす。扇風機(芝浦)は、十五年まえのものだが、一度も故障しない。

 トースター(東芝)は、日曜だけ使う。氷冷蔵庫を使っていたころは、夏で一日氷三貫目、月二千円以上かかっていたが、電気冷蔵庫(東芝)になってからは、電気代が二、三百円高くなっただけで問題にならない。

 ストーブ(東芝)はあるが、電圧が低いので、ガスにしている。女中がいないので、ちかく掃除機を買う予定。

---------------------------------------------------------------------------

 ミキサーの『モーターを切らす』というのは、モーターの定格出力を無視した使い方から起こる現象。負荷のかかった状態で連続回転を続けると、モーター自体が発する熱で自分自身を「焼き切る」ことになる。

 つまり、材料を入れてスイッチポンッ、1分でジュースの出来上がり・・ではなく、10秒回して10秒休む、再び10秒回して10秒休む・・・とすれば、三船さんチの悲劇は怒らなかった可能性が高い。相手の力を利用する「空気投げ」のようにはいかない。

 この取材があった2年前の昭和28年当時、「2段式スイッチ」「取手なし六角形ガラスボトル(容量800ミリリットル)」のミキサーが発売されているが、お値段なんと1万5000円也。公務員の初任給が7000円前後だったから、今なら30万円近い値段だ。

 氷冷蔵庫とは、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』でゴミ置き場に打ち捨てられていた例のヤツ。上の部屋に氷のかたまりを入れ、下流する冷気で下の部屋を冷やす仕組み。トビラの開け閉めの回数によって異なるが、庫内は10℃前後に保たれる。冷気に水分が含まれているので、新鮮野菜の保存には最適らしい。当時の値段は8万円ほど。

 以前、氷冷蔵庫の良さに着目した会社が、現代版氷冷蔵庫を開発して売り出したが、お値段28万円也。今どき、氷屋さんを探すのは砂浜でひと粒の砂金を見つけるより難しいかから、別に製氷機用の冷凍庫を買わねばなるまい。だったら、製氷機付氷冷蔵庫というのはどう。35万円くらいで。買わないけど。

 氷1貫目は3.75キロ。大きさは約11×13×27センチ。かき氷器に使われる氷は、1貫目の氷を半分に切ったもの。昭和30年代に1貫目35円だったから、同20年代なら20〜25円ほど。1か月の氷代金が2000円というのもうなずける。現在の値段に直すと4〜5万円。冷蔵庫にして大正解。

『女中がいないので掃除機を買う』というのは愉快。一瞬、ウチは「カミさんがいるけど掃除機もある」と思ったが、そんなことを公言したら大顰蹙。少なくともカミさんに云ったら、半年は口を聞いてもらえないことを覚悟せねば。そういう時代だ。

引用データ:「洗濯機と冷蔵庫 -家庭電化時代来る-」/『週刊朝日』昭和30年8月21日号

posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | 昭和の生活

2013年05月02日

昭和の生活(82) 何が本当に便利か <各界の10家族に聞くE 東畑精一氏宅/東大教授・農業経済> (昭和30年)

家庭用電気器具のうち、八点(トースター、ミキサー・扇風機・ぜんたく機・ストーブ、冷蔵庫、掃除機、テレビ)について、各界の名士の家庭について、その有無、使ってみての感想などを聞いてみよう。

---------------------------------------------------------------------------

【東畑精一 明治32年(1899)−昭和58年(1983)】
 せんたく機(フーバー)、冷蔵庫(東芝)、扇風機(東芝)、ミキサー(東芝)。ただし、ミキサーは、パン粉や、おしる粉を作る以外、ぜんぜん使わない。

 年がら年中、火ばちを使っている関係上、トースターも、ストーブもない。日本間が多いので、掃除機は使わない。

---------------------------------------------------------------------------

 ミキサーの使い方が独特。この時代、野菜ジュースが健康食として脚光を浴びていたから、ほとんどの人がジュース製造機としてミキサーを購入していたのに、料理のための調理器具としてだけに使っているというのは珍しい。

 当時、市販のパン粉がなかった訳ではない。昭和26年以降、小麦粉が自由に売買できるようになったから、パン粉製造工場はフル稼働していた。

 あえて高価な電化製品で自家製パン粉をつくるのは、よほどのグルメか、あるいは水っぽくなってしまう野菜ジュースに辟易したからか。おそらく、ジュースブームで買ったはいいが、ひと口飲んで「なんじゃこれ」となったのだと思う。

 ちなみに、最新の英語辞書に「panko」が掲載されている。もちろんパン粉のこと。以下が解説の一例。

Panko is the Japanese word for “bread crumbs.” They are the Japanese version of bread crumbs, and they tend to be lighter, crispier, and crunchier than Western bread crumbs. They are excellent for breadings, and make an excellent filler in things like crab cakes. Many Asian specialty stores carry panko, and it is also available in some conventional grocery stores, especially those in urban areas.

 火鉢は生活必需品。手をかざしてしばらくすれば、身も心もホッカホカ。縁にまたがる股火鉢なら、一気呵成の急速暖房。タバコの吸い殻、灰の中。乾燥注意の冬場なら、五徳に鉄瓶、水蒸気。

 さらに東畑さんチでは、五徳に金網、こんがりトースト一丁上がり・・・という感じなんだろうな。猛暑の夏場はどうしてたんだろ。

引用データ:「洗濯機と冷蔵庫 -家庭電化時代来る-」/『週刊朝日』昭和30年8月21日号

posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | 昭和の生活

2013年05月03日

昭和の生活(83) 何が本当に便利か <各界の10家族に聞くF 石垣綾子氏宅/評論家> (昭和30年)

家庭用電気器具のうち、八点(トースター、ミキサー・扇風機・ぜんたく機・ストーブ、冷蔵庫、掃除機、テレビ)について、各界の名士の家庭について、その有無、使ってみての感想などを聞いてみよう。

---------------------------------------------------------------------------

【石垣綾子 明治36年(1903)−平成8年(1996)】
 ないものは、せんたく機とテレビ。二人暮しだから、せんたく物は、クリーニングに出している。また、ドレスは手洗いでないと、はやくいたむ。

 テレビは目が疲れるし、見るひまもない。今年、ミキサー(三洋)を買ったが、アワが立つのが欠点。扇風機(芝浦、日立)は三台あるが、戦前のものは、すぐ熱をもつので使わない。

 いちばん、ありがたいのは冷蔵庫(日立)だ。夏など、朝入れておけば、夜帰ってきてからでも、すぐ食べられる。独身者や、共かせぎ向きだ。

 掃除機は、十五年まえ、アメリカで買ったものだが、電気代は、一時間使っても一円か二円。とくに、クタミのゴミはよくとれる。アメリカ製のストーブがあるが、強すぎるので、あまり使わない。

---------------------------------------------------------------------------

<各界の10家族に聞く@ 中島健蔵氏宅/評論家>もそうだが、二人暮らしだから洗濯機不要らしい。ということは二人分の洗濯物ぐらいなら、洗濯機を購入するよりクリーニングに出したほうが安上がりということになる。

 では、当時のクリーニング料金はどのくらいだったのだろう。この取材があった3年前の昭和27年、料金協定を行なったクリーニング業者19名に対し、公正取引委員会が独占禁止法による勧告決議をしているから、そこから拾ってみよう。

 委員会が認定した事実の要約は、以下のとおり。

 東京都クリーニング商工業協同組合に属する組合員である19名は、それぞれ店舗を有している。
 クリーニング料金は、昭和26年4月統制廃止後、一般にワイシャツ1枚25円ないし35円だった。
 しかし、同年8月電気料金約40%値上げをはじめとするガス、水道等諸料金の値上げがあった。
 そのため「これじゃ儲けが減ってしまうべぇ」となり、19名は常会で「ワイシャツ1枚40円以上にしたらよかんべ」と決め、値上げ通知のチラシ約7500枚を新聞の折込広告でばらまいた。
 以降、『同地域のクリーニング料金は、ワイシャツについては1枚30円ないし40円となり、それ以前の25円ないし35円に比し、一般に5円の値上りを見せているものと認められる』。

 結果、私的独占禁止法第4条第1項第1号の規定に違反しているということになり、19名は『本年5月行つた料金協定を破棄するとともに、新聞折込によつてこの旨を顧客に周知せねばならない』ということで審決。

 昭和26〜27年当時、ワイシャツのクリーニング代は25〜35円が相場だったことが分かるが、銀行員大卒初任給が同24〜26年3000円、同27〜32年5600円だったことを考えると、かなり高い。

 どう考えてもクリーニング屋を洗濯係にするのは不経済だと思うのだが、そこは「主婦論争」の石垣さんだもの、「家事労働は無償じゃありません!」と叱られてしまうかも。

引用データ:「洗濯機と冷蔵庫 -家庭電化時代来る-」/『週刊朝日』昭和30年8月21日号

posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | 昭和の生活

2013年05月04日

昭和の生活(84) 何が本当に便利か <各界の10家族に聞くG 石川達三氏宅/作家> (昭和30年)

家庭用電気器具のうち、八点(トースター、ミキサー・扇風機・ぜんたく機・ストーブ、冷蔵庫、掃除機、テレビ)について、各界の名士の家庭について、その有無、使ってみての感想などを聞いてみよう。

---------------------------------------------------------------------------

【石川達三 明治38年(1905)−昭和60年(1985)】
 ないものは、せんたく機、ストーブ、テレビ。せんたく機は、五年まえ買ったが、型が古く、故障が続出したため、売ってしまった。手洗いのほうがよく落ちるので、その後買わない。

 ストーブを使うと、よくヒューズがとぶので、まきストーブにしている。

 冷蔵庫(アメリカ製、ジェネラル・エレクトリック)は、二年まえ買ったが、電気代は買うまえと、ほとんど変らない。掃除機(東芝)は、音が大きく、部屋のすみずみのゴミはよくとれない。

---------------------------------------------------------------------------

 5年前に買った洗濯機なのに『型が古く』とあるから、中古品を買ったのだろうか。あるいは、型の古い新品を買ったのだろうか。

 国産初の洗濯機は、昭和5年に発売された東芝solar A型。深めの小型金属製たらいの中央で、撹拌式の回転翼が左にグルン、右にグルン。たらいの上に絞り器が付いているのは、絞った水がたらいに落ちるようになっているため。

 要するに、洗濯板でゴシゴシが、電気仕掛けのグルングルンに変わっただけなのだが、それでも、昭和25年に比較的安価な噴流式の量産型が出回るまで、標準型洗濯機として主婦の羨望の的だった。

 となると、石川さんチが洗濯機を買ったのが昭和25年だから、最新の噴流式が発売される直前に新品のグルングルンを買ってしまったのかもしれない。

 当時のグルングルン説明書によれば、一度に洗える量は約2.7キロ(シーツ4枚分に相当)。おそらく石川さんチでは、毎回、大量の洗濯物をグルングルンまかせにしていたのではないか。

 通常使用でもモーター音がけたたましく、それが「洗濯機あるもんね」という自慢になっていたから、大量の洗濯物で断末魔の悲鳴を上げるグルングルンに気が付かなかったのかも。だから『故障が続出』。

 それにしても、グルングルンの末路が『売ってしまった』というのは想定外。しかも『手洗いのほうがよく落ちる』という捨て台詞に、グルングルンに深く同情してしまうのであった。

引用データ:「洗濯機と冷蔵庫 -家庭電化時代来る-」/『週刊朝日』昭和30年8月21日号

posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | 昭和の生活

2013年05月05日

昭和の生活(85) 何が本当に便利か <各界の10家族に聞くH 森雅之氏宅/俳優> (昭和30年)

家庭用電気器具のうち、八点(トースター、ミキサー・扇風機・ぜんたく機・ストーブ、冷蔵庫、掃除機、テレビ)について、各界の名士の家庭について、その有無、使ってみての感想などを聞いてみよう。

---------------------------------------------------------------------------

【森雅之 明治44年(1911)−昭和48年(1973)】
 三年まえミキサーと、トースター(アメリカ製ユニバーサル)を買った。ミキサーは、水を入れてうすめないと使えないので味がまずくなるし、ビタミンが殺されると本に書いてあったので使わない。

 扇風機(東芝)は、頭が変になるので、もっばら来客用。テレビは、目にわるいようだし、子供の勉強上買わない。掃除機(東芝)は、音が大きいので、最近、アメリカ製と取りかえた。ホウキなら、せっかく掃いてもゴミがとび、ゴミの宿変えをしただけという結集になるが、その点、電気は掃除効果満点だ。

---------------------------------------------------------------------------

 ミキサーで作ったジュースはまずい・・・これまで登場した方々の一致した意見だ。

 投入した材料をすべて木っ端微塵にするには、あらかじめ水のような液体を入れてスキ間を埋めておかないと、回転刃が空回りしてしまうのがミキサー。だから水は必須。

 当然、水を入れた分だけジュースは薄くなるわけだが、そんなことはミキサーを購入する前に分かっていてもようさそうなのに、使って初めて気づいたようなニュアンスで語るから、当時の知識人というのは鷹揚というか太っ腹というか、オトナとしての風格がある。

 月給の何倍〜何十倍もする家電製品が、果たして価格に見合った幸せをもたらしてくれるのかどうか、誰もが知りたかったに違いない。

『暮しの手帖』はすでに発刊されていたが、家電製品が主題として始めて登場するのは「35号」(昭和31年)の電気洗濯機からで、その中で『ミキサーよりも冷蔵庫よりも、まず電気センタク機をお買いなさい』と言い切っているから、ミキサーの立場がない。

 ちなみに昭和30年に登場したジューサーは、刃ではなく「おろし金状の突起付きのザル」が回転。おろし金ですりおろされたドロドロは、ザルによって繊維質とジュースに分離される。もちろん、水は不要。

『音が大きい』と評価された東芝の掃除機だが、おそらく梶棒に収塵袋がぶら下がった製品(アップライト型もしくはホウキ型)だと思われる。吸込み口に吸引モーターが取り付けられていたので、爆音だったに違いない。

引用データ:「洗濯機と冷蔵庫 -家庭電化時代来る-」/『週刊朝日』昭和30年8月21日号

posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | 昭和の生活