2013年09月01日

銀ぶら讀本(18) 銀座のママさんバー 2/4 (昭和31年)

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 昭和31年発行の『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(銀座タイムス社/定価100円)は、岩波新書サイズ80頁ほどの小冊子。著者は銀座タイムズ社社長の中野日出男さん。

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 広津和郎の小説「女給」のヒロイン小夜子こと杉田菊枝さんも、既に姥ざくらながら、八丁目裏でバー「コテイ」のママさん・・・戦後はマダムと云う呼び方はママさんに変つた・・・に納まつている。

 このママさんは「わたしや夜咲く酒場の花よ・・・」などの流行歌の盛んにうたわれた昭和初年のタイガー、黒猫などのカフエーが銀座に出現したころ、こうした店を転々しているうちに文士たちに可愛がられて広津和郎の小説のモデルになつて有名になつたが、その半面苦労も多かつたらしく、きようまで一日も落着いた日がなかつたと彼女はいう。

 然し、何といつても、この道で苦労してきただけあつて商売はソツがなく愛嬬もあれば、タンカも切れるので客筋のうけはいい。

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 映画化(昭和6年公開/曽根純三監督/広津和郎原作)もされた『女給』だが、今どきの青少年には何がなんだか判るまい。要するに「女給」は死語。だからワープロソフトで「じょきゅう」と入力してもダメ。「女」「給仕」と入れ、切り貼りすることになる。

 同じように「姥ざくら」も死語に近いかも。よほど「姥」の印象が強いのか、「バァさんサクラ」だと思っている人が多い。でも違うんだよな。辞書によれば『娘盛りが過ぎても、なお美しさや色気が残っている女性』。だから「よっ! 姥ざくら!」と言われたら、「どうせバァさんですよ!」と応えちゃダメ。

「マダム」が「ママさん」に変わったのは戦後らしい。モダンな響きがするマダムだけれど、「有閑マダム」「マンダムキラー」など、響きが悪い。その点「ママさん」には、多少、幼児性を帯びるものの、フトコロ豊かな慈愛に満ちた観世音菩薩のような感じがするから、バーにはうってつけの呼び名だと思われる。「パパさん」の場合、まったく異なシチュエーションで使われるけど。

 広告は懐かしの日野ルノー。ラジオ(文化放送)の深夜放送が午前3時をむかえると、いきなり始まる『日野ミッドナイトグラフィティ 走れ! 歌謡曲』でお馴染み。

 日野ルノーは、日野自動車がフランスのルノー公団と契約を結び(昭和28年)、やがて完全国産化に成功(昭和32年)。だからこの広告の日野ルノーはノックダウン生産品。

 748CC、フル・モノコック構造の軽量(600キロ)4ドア4座セダン。車体後部に水冷直列4気筒OHVエンジンを縦置きした後輪駆動。最高速度100キロ/時。全国でタクシーとして活躍。

 広告文面に『1キロ当たりガソリン代2円40銭』とあるが、当時はガソリン1リットル38円だったから、燃費に直すと15.83キロ/リットル。今どきのトヨタ「アクア」(1500CC)なら、JCO8モード走行燃費35.4キロ/リットル。技術革新ってすごい。

引用データ:『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(中野日出男著/銀座タイムス社/昭和31年6月10日発行)
参考データ:東京日野ルノー株式会社/『朝日新聞』(昭和31年12月11日)夕刊

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2013年09月17日

銀ぶら讀本(19) 銀座のママさんバー 3/4 (昭和31年)

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 昭和31年発行の『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(銀座タイムス社/定価100円)は、岩波新書サイズ80頁ほどの小冊子。著者は銀座タイムズ社社長の中野日出男さん。

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 岩田専太郎画伯の美人画のモデルに生き写しの美人ママさん下村富美子さんのバーF(エフ)は池島信平、中野実、川口松太郎、永井竜男、今日出海氏ら文春関係の作家たちの後援で八丁目の全線座横通りに最近開店した。

 一寸見るとあちら名前のように思える横文字の店名。フランス語でも、英語でもないので何語だろうと考えていると、同行のY画伯、「ゴサレというんですヨ」と教えてくれる。

 成程、ローマ字綴りで、日本語の「御座れ」で”どんどん御座れ”とのわけらしい。ママさんは某実業家の夫人で資本家。

 ユミさんという越路吹雪に似た美人が第一線で美しい人たちを指揮しているが、裏通りのバーとしてはフロアも広く、二階もつかつている。

 高級バーらしい品格ある店内の設備、調度も感じよく、金に不白由ない人なら、ここの美しい人たちをづらりと侍らせて時々オダをあげにゆきたいところ。実業界、作家、画伯など有名人の常連が多い。

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 今や「F」も「GOZARE」もない。小説家や画家、あるいは編集者などが夜な夜な出没することで名をあげた「文壇バー」も、どこもかしこも店じまい。芸術家が酒に弱くなったのか、それともママさんの質が落ちたのか・・・わかりまへん。

 銀座八丁目にあった映画館「銀座全線座」は昭和53年に閉館廃業し、翌年、同地に銀座国際ホテル開業。JR渋谷駅の隣にあった「渋谷全線座」は同52年に閉館廃業し、2年後、渋谷東急イン開業。昭和は遠くなりにけり。

 広告は山之内製薬のファイナリン錠。中高年にとってお馴染みの山之内製薬だが、平成17年に藤沢薬品工業と合併。アステラス製薬になってしまった。「明日照らす」なんだろうか。いずれにしても、昭和は遠くなりにけり。

引用データ:『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(中野日出男著/銀座タイムス社/昭和31年6月10日発行)
参考データ:山之内製薬株式会社/『朝日新聞』(昭和31年3月21日)夕刊

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2013年09月18日

銀ぶら讀本(20) 銀座のママさんバー 4/4 (昭和31年)

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 昭和31年発行の『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(銀座タイムス社/定価100円)は、岩波新書サイズ80頁ほどの小冊子。著者は銀座タイムズ社社長の中野日出男さん。

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 古い日活の女優最上米子さんも西五丁目のもと文芸春秋新社の横にバー・ドンを経営、同じ小路にタイガーのお夏こと高崎雪子さんのルパンがある。ボルドーにいた川辺ルミ子さんのエスポワールも美人ママさんで有名。

 いまもさつちやんの愛称で古い客から呼ばれているが、ブロウドウエイにいたストーク・バーのママさん。もと無声映画時代の女優だった滝田静江さんのシズエ。甲府財閥若尾家令息初尾夫人のパウザ。

 石井光次郎代議士の令嬢で、シヤンソン歌手石井好子さんの姉、久子さんのマンハッタン。池谷S劇場支配人夫人のタニ。島耕二監督先夫人のひとり寝の小夏の鹿児島夏子さんなど、何れもママさん大いに稼ぐといった店である。

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「古い日活の女優」の代表作は『残菊物語』(昭和14年)、『成吉思汗』(同18年)。確かに古い。

 でも、経済が右肩上がりだったころ、芸能界の大物小物が先を競うようにオープンした東京原宿竹下通りのタレントショップとくらべたら、バーのママというのは気が利いている。

 銀座ルパンは現在も営業中。写真家林忠彦が太宰治を撮ったバーということで有名だが、開店したのは昭和3年だから、創業85年の老舗中の老舗だ。

 エスポワールの美人ママ川辺ルミ子は、常連の白州次郎が三丁目の「おそめ」に通い詰めになったことを知って怒鳴り込んだのだそうだ。その経緯を小説にしたのが川口松太郎『夜の蝶』(昭和32年)。以降、映画化もされ、「夜の蝶」はママやホステスのことを指すことになった。

 ちなみに、川辺ルミ子がこの世を去ったのは平成元年正月。

 広告の三共株式会社は明治32年創業の製薬会社。子会社に三共内燃機があり、ハーレーダビッドソン(オートバイ)のライセンス生産を行なっていた。それが、あの「陸王」。

 平成17年、第一製薬と経営統合。2年後に第一三共株式会社となる。

 それにしてもサンパーは強烈そう。ノミにハエにカだけでなく、南京虫にダニに油虫にだって「著効します」だもの。

引用データ:『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(中野日出男著/銀座タイムス社/昭和31年6月10日発行)
参考データ:三共株式会社/『朝日新聞』(昭和31年5月4日)夕刊

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2013年09月19日

銀ぶら讀本(21) アルサロ喫茶での遊び方 1/7 (昭和31年)

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 昭和31年発行の『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(銀座タイムス社/定価100円)は、岩波新書サイズ80頁ほどの小冊子。著者は銀座タイムズ社社長の中野日出男さん。

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 アルサロ喫茶又は未亡人喫茶といつても、一見喫茶店の如く感じられるが、内容はキヤバレースタイルである。バンドの演奏もあれば、フロアもあつて踊れるところが多い。

 営業開始も午後五時からでいわば高級キヤバレーの普及版に相当するもので、色気も欲し、遊びも安くあげたいという連中の、要望を満すため生れたものである。

 ノーチップ制度で、お会計の二割(社交係一人につき、百円乃至二百円指名だと三百円、卓料百円乃至二百円)のサービス料に、税金一割五分がつく。ビールは小瓶で百円、大瓶、二百円から二百五十円といつたところが標準。

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「アルサロ」はアルバイトサロンを縮めたもの。「未亡人喫茶」は文字通り未亡人ホステスのサービスが売り。いずれもキャバレーの一種。

「高級キャバレーの普及版」とはよく云ったもので、要するに「ホンマのトーシロでっせ、オボコイに決まってまんがな」的美人がホステスとして働くキャバレーなのだ。

 おそらく大阪あたりが発祥の地だと思われるが、今どきは絶滅危惧種のひとつ。

 広告のスタンダード無線工業株式会社(創業昭和21年)は、ポータブルラジオ受信機で一世を風靡した会社。商号変更して日本マランツ株式会社となったのが昭和50年。

「高一付5球薄型」のスタンダード携帯ラジオは、「球」とあるように真空管(電池管)
のポータブルラジオ。5球スーパーから電源部の平滑回路用真空管を省き、その分を高周波増幅一段分に使用するから「高一付5球」。電源は電池あるいは電灯線。価格は1万2800円也。

 しかし、前年の昭和30年に日本初のトランジスタラジオ「TR-55」が東京通信工業(現ソニー)から発売されているから、スタンダード携帯ラジオの販売は苦戦を強いられたに違いない。


引用データ:『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(中野日出男著/銀座タイムス社/昭和31年6月10日発行)
参考データ:スタンダード無線工業株式会社/『朝日新聞』(昭和31年2月10日)夕刊

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2013年09月20日

銀ぶら讀本(22) アルサロ喫茶での遊び方 2/7 (昭和31年)

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 昭和31年発行の『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(銀座タイムス社/定価100円)は、岩波新書サイズ80頁ほどの小冊子。著者は銀座タイムズ社社長の中野日出男さん。

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“ビールを両手でつぐ・・・それほど純情な乙女”のサービスが、このアルサロ出現当時からの特性であつたが、いまでは相当プロも交つている店があるという話である。

 また未亡人喫茶サロンというのがあるが、これとてアルサロと同巧異曲のキヤバレースタイルだが、ただアルサロと違うところは、前者が純情な乙女をうたつているのに対し後者は殊更に未亡人を宣伝しているというところである。

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 ビールを両手でつぐと「純情」なら、片手の場合は「すれからし」か。しかも、もう一方の手にタバコだったら「老獪」だろう。

 カミさんに頭があがらない薄給のサラリーマン諸氏なら「純情」がいいに決まっているから、アルサロが人気になるのもうなずける。

 未亡人喫茶サロンはホステスが未亡人というわけだが、昭和31年のことだから戦争未亡人も多く、妙なリアリティがあったのかもしれない。

 広告はワシのマークの大正製薬。中高年なら誰でも知っている「バーゲンだよ〜♪」でお馴染みの『大正テレビ寄席』(テレビ朝日系)のスポンサーとしても有名だった。

 総合保健剤「サモン」とあるが、要するに滋養強壮薬。昭和30年の発売以来、絶大な人気を誇る大衆薬だが、「サモン」「サモン内服液」「サモンSゴールド」などは販売終了となり、「サモンエース」が頑張っている。

引用データ:『銀ぶら讀本 巻の1 遊びの知識』(中野日出男著/銀座タイムス社/昭和31年6月10日発行)
参考データ:大正製薬/『朝日新聞』(昭和31年5月15日)夕刊

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